わかってる。
本当にキミの幸せを願うなら、

オレのそばじゃなくて違う誰かのほうがいいってこと。


でも、それが出来っこないのも
身勝手すぎることも




痛いほどにわかってる。





14.風邪菌とともに 前







、そういえばさーこれ。」

カカシはの前に1枚の封筒を差しだした。


「なんです?」
おもむろに中を覗いてみると、そこには数枚の紙幣が。

「???生活費ならこの前いただきましたけど。」


「任務、ごくろーさんって。三代目から。」



任務?任務・・・・
「あぁ!!」

「アハハ、やーっと思い出した?」

「はい。でも・・・任務って、報酬出すってあれ本当だったんですか?」

「ん?そりゃー三代目火影様が言ったんならそーでしょーよ。」


「いいんですかね。」


は未だ封筒の中身の物に納得がいってないらしい。

「なんで?、ちゃーんと子守りしてたじゃない。」


たった1日ちょっとの間に。
すっかりなついてしまったユウマが別れを悲しんで泣いてしまう程に。



〜。』
父親に抱かれながらも、泣きながらをいつまでもユウマは見つめている。

『ユウマ、にならいつでも会いにくればいいだろ。』
そう言いながらも名残惜しそうなソウマ。

『うん、今度はお母さんと産まれた赤ちゃんも一緒においで?』
優しく頭を撫でるに、ユウマは泣き止みながら。

『ぼく、お兄ちゃんになるんだ!』
兄になる自分がメソメソしている訳にはいかない、と。そう思い直したのか、最後は輝く笑顔で別れた。





「あんなに楽しい思いさせてもらったのに、その上お金まで頂いちゃうなんて悪いなーと思いまして。」

「いいじゃない、楽しかったんならそれはよかったし。実際が1番頑張ってたしねぇー貰えるもんは貰っときなよ。」

「それも、・・・そうですね!」

はカカシに褒められた事が嬉しかったのもあり、今回はありがたく頂戴することにした。


「この際、なんか欲しいものでも買ったら?」

「欲しいものですか・・・。」
んー特に・・・・これといってないんだよね。


「っていうか前から思ってたんだけど。普段遠慮してるんだろーけどさ、別にそのお金使わなくても渡してるお金で服とか買っていいんだよ?」

「え?あーいや、はい。」

おしゃれ・・・かぁ。
こっちに来てからそういうの全然縁がなかったからな〜。



というより、普段からあまり着飾ったりを好まない
初めに買ってもらったものに、季節に合わせて数着買いたしただけで本人としては事足りているようで。



着飾ったはそりゃ、まーたキレイになるんだろうなァ。


以前浴衣を着せた時のように。
ちゃんとすれば思った以上にキレイになるのに、この子はそれを知ってか知らずか・・・。


まぁ、開発すんのも男の醍醐味ってわけね。

「ま、今度一緒に買い物でもしに行きましょーか。」

「買い物・・・ですか?」

「そ。をもーっとキレイにしに、ね。」


うわーニヤニヤして、カカシさん楽しそう・・・。


「別に、・・・キレイになっても。」

「ん?」

「見せる人いないですし・・・。」


急に視線を外して話す
そんなを見て、カカシはスッと息を吸って。



「オレ。」



「は?」

「オレがいるでしょ。」

そっと腕を掴んで、真っ直ぐなカカシさんの瞳が



私を射抜く。



そらしたいのに、そらせない。

どうしたんだろう・・・この空気の感じは、あの時と似ている。
胸がドキドキして、空気が薄くなった訳でもないのに突然息がしづらいかんじ。



「カカシさん?」


「あの、・・・さ。、オレ・・・・そのー」


「・・・・。」


の表情が。

今にも泣いてしまいそうで、いかにも困ってますって書いてある。


それを助けるように、洗濯機が終了を告げる電子音がせわしなく響いた。

「わ、私!洗濯物干してきます!」

そう言い残して、はパタパタと小走りに去っていく。


ハァ〜〜。


タイミングがよすぎる洗濯機に愚痴を言ってもしょうがないのが分かっている分尚更、カカシはその場にうなだれた。
はっきりスパッと言えないオレもオレだよねぇー。




「・・・だって自分から告白なんてしたことないんだもん。」



今まで女の方から言い寄られるばかりで、自ら誰かを愛したことなど一度もない。

こんなに誰かに恋焦がれた記憶など、



思い出をいくら遡っても見当たらないのだ。



だからこそ。

大切にしたくて、でも同じくらい自分の手で滅茶苦茶にもしてみたくて。
もてあますほどの自分の気持ちに、どうしてよいかわからなくなる。




あーもう。
タイミングよく、かっこよく告白なんてできるかってーの。


言わなければいけないのは分かっている。



カカシは焦るばかりで、ちっとも言葉に出来ずにいた。




オレって、口より先に手が出るタイプだったのねー。
・・・・ちょっとショックかも。








それからしばらく時が経ち。


「おはよー。」



?」



「え?あっ、おはようございます〜。」


ん?どこかボーッとしている(がボーッとしているのはいつもなのだが)様子に、オレは不思議に思って。
だから思いきっての前髪をかきあげて、あらわれた額に自分のおでこをくっつけてみた。




やっぱり。




「熱あるね。」

「熱・・・?でも私元気ですよ〜。」



顔がこんなに近づいてるのに気づかない時点で、ダメだと思うけど。



カカシはくっついていた額を離し、今度は正確にはかるために両手で首筋に触れた。
「ほーら、リンパ腫れてる。痛くない?コレ。」

オレは腫れているのリンパ腺を指の腹で少し押した。

「いたっ!・・・くないです〜。」

「・・・サーン?」

次は顎に手をおき上を向かせた。


「はーい、口あけて喉見せてー。」


やっと先ほどから自分がされていることに意識が向いてきたらしい。
は上を向いたまま、口をあけない。


「ダーメ。あーってして?」


ってばすっごく今さら。
ま、久々に無防備な姿が見れてこっちは嬉しいんだけどねー。


どんなに恥ずかしくとも、カカシに優しくそう言われてしまえばは逆らえない。
しかも今は熱がある状態ならなおさらだ。



慣れって怖いな〜。



どこかボーッとする頭ではそう思った。

「んー真っ赤だね。素人目にみても完璧、風邪です。」

「で、でも〜。」

よほど風邪だと認めたくないらしい。

「今日は大人しく寝てなさいね、オレがちゃーんと・・・」




って、今日任務じゃなーい・・・。
しかもなんでこんなときに限って。



そう、普段の下忍指導ならなんとかこじつけての看病にあたることも可能なのだが
今日は、上忍としてのAランク任務がしかも依頼主からカカシに指名されているため
どうしたって自分がの看病をする暇はないのだ。



ハァー・・・・しょうがないけどサクラあたりに頼んでみよーかな。



「ごめん、オレ今日任務だからついててあげられないんだけど・・・・。」

「大丈夫ですよ〜大したことないですから。」


だからの大丈夫はあてにならないんだって。



「まぁ、それはこっちに任せて。さーは着替えて布団に行った行ったー。」


ぐいぐいと、半ば無理矢理カカシさんに部屋に押し込められてしまった。
仕方なく再びパジャマに着替え、少し厚着をしたら風邪の意識がわいたのかなんだかしんどい気がしてきた。



「自分でもあんまり気づかなかったのに・・・カカシさんてスゴい。」


がそう思ったところで、控えめにトントンと、ノックがされた。


「どうぞ〜。」

、サクラさーダメだって言うから・・・・!!!???」




バタンッ!




ドアを押して、部屋に入ろうと顔を覗かせたはずのカカシは再びドアをしめてしまった。



「???」


それからしばらくしても扉の向こうからは何の音沙汰もない。
カカシが部屋の外で何を思っていたかというと・・・・。




顔を二の腕にうずめて、廊下にしゃがみこんでいた。




あれは・・・ムリです。

だってパジャマで無防備な姿に加えて、風邪のために頬は若干赤く染まっていて。
おまけに口も半開きで、見上げられたなんて・・・。



そんなの男として反応しないワケないでしょーよ。



最近まったくヤってないからねぇー。
に相手して欲しいけど、そーいうワケにいかないってことは店に行って・・・・って、なーに考えてんのよ。



あー・・・なんていうか。

なおさら任務行きたくなくなってきた。



「ハァ〜・・・。」


「カカシさん?」


「え?!あ、・・・。」
多少驚いたが、大丈夫。口には出てなかったハズだ。



痺れをきらして、がドアを開けてカカシの様子を窺いにきた。


「あのー大丈夫ですか?」

「ごめんごめん、なんでもなーいよ。さ、はベッドに戻って。」

は大人しく布団へと入り、カカシはベッドのとなりに座った。


「で、サクラに来て貰おうと思ったんだけどね。サクラどうしても外せない用があるんだって。だからさ、そのー」


「?」

カカシは本当はイヤでイヤで仕方ない事実を、受け止めた。


しょーがないよね、のためだもん。



が風邪だとわかり部屋で休むよう声をかけてから、カカシは影分身を1体作りサクラの元へ向かわせた。




「先生ごめんなさい!さんの看病してあげたいんですけど、今日はどうしても外せない用事があって・・・。」
玄関先でキッパリとサクラに断られたカカシは、すっかりあてが外れてしまった。


サクラがダメって事は・・・ナルトはうるさいから却下、サスケは・・・アイツ他人の世話なんて出来んのか?
んーやっぱり1人にしておくワケにいかないしなァーってなると。



あの人しかいない・・・か。



すーっごく不本意だけどね。

サクラに断られた足で、三代目の元へ向かい事情を説明してその人の今日の仕事を変更してもらった。





「イルカ先生。」




授業に向かう前の彼を捕まえた。

「あれ、カカシさん?」

「どーも。ちょっといいですか?」

「今、ですか?俺今から授業があって・・・。」



「今日はちょっとアナタにお願いがあるんですよ。」



カカシさんの言っている意味がさっぱり飲み込めない。

「はぁ。」

用があるならさっさとして欲しい、という意味を込めてチラ、とイルカは時計を見た。

あと5分で授業が始まる。



が風邪を引いたんです。付きっきりで看病してやりたいのは山々なんですが、あいにくオレにはこれからどうしても外せない任務がありましてね。」


つまり、俺にカカシさんのかわりにさんの看病をしろと?


「でも、俺には授業が・・・。」

「三代目に代打をお願いしておきました。なので、イルカ先生。今日1日についててやってくれませんか?」


そういうことならと、イルカはカカシからの願ってもない頼みを受け入れた。


「わかりました。・・・でも、カカシさん。」


カカシさんがあっさりと言うから。
俺が弱ったさんのそばにずっとついている事の意味を、ふいに俺は忘れていた。


それだけ余裕ってことなのか、

それとも病人に手を出す訳がないとたかをくくっているからなのか。



「なんです?」



いつもの、のんびりとした瞳では感情がちっとも読めない。
それでもじっと、俺は瞳の奥を見続けた。



「いいんですか?・・・俺なんかをさんのそばに置いても。しかもさん、弱ってるんでしょう?」


一瞬その奥の方がわずかに揺れたような気もしたが、

気のせいかもしれない。




だって、すぐににっこりとその瞳は弧を描くように笑ったから。



「イルカせんせーをそばに置くのはまぁ、多少危険ですけどね。オレのわがままなんかより、の身体の方がよっぽど大事ですから。」
準備が出来たら家に来てください、とだけ告げて瞬身するのかと思いきや。

「言い忘れてましたけど。」

「はい。」




「今日の看病、任務ですから。」




え・・・?


「任務・・・ですか?」

「そ。」

「依頼主は、」
火影様ですか?と俺は問おうとしたが。




「オレです。」




意地悪そうな笑みを浮かべて、カカシさんは自分を指差していた。

「もっかい言いますよ。今日の事は正式に火影様を通してアナタに依頼された任務だ。・・・オレの言ってる意味、わかりますよね?」



あくまでも忍として、己の都合は捨てて。
任務という以上、たとえ相手が知り合いであっても想い人であっても。




私情を挟むな・・・と、そういうことか。




「ハァ〜・・・上手い話だと思いましたよ、貴方が持ってくるにはすぎるくらいに。」

「当然でしょう。そうでないとオレ安心して任務に行けないじゃないですか。ま、よろしくお願いしますねー。」


そう言い残し、カカシさんはボフン、とその場から消えた。




「・・・・影分身だったんですね。」





という事があった。


「ま、とにかく追々わかるから心配しないでね。」


「はぁ。」
いいのかな、別に私1人でも大丈夫だと思う・・・けど。


「しんどいでしょ?とりあえず一回寝なよ。」

素直に瞳を閉じたの布団を少し引き上げて。
今日は風邪のせいか簡単に触れさせてくれるにカカシはどこかホッとしながらも、



そっと、

そして優しく。



愛しさがいっそ伝わればいいと思いながら、頭を撫でた。




「カカシさん。」



閉じていた瞼をわずかに持ち上げて、気だるそうにカカシの名を呼んだ。


「ん、なーに?」

「お見送り、・・・今日はここからでもいいですか?」


こんな時にもオレのお見送りをしてくれる
それでも、玄関までと言わないのは思った以上に風邪の具合が悪いのか。

息がわずかに荒いのを感じて、熱が徐々に上がり始めたのだろうとカカシは思った。



「当たり前でしょ。こんなときまでオレに気ィ使わなくてもいーの。」

「はい、気をつけて・・・いってらっしゃい。」

「うん、ついててあげられなくてホントにごめーんね。はちゃんと休んで風邪、治しなよ?」



こくん、とはしっかりと頷いて。
「大人しくしてカカシさんの帰りを待ってます。」



弱々しいの、なんとかわいいことか。
襲いかかりそうな本能を、初めはひたすら理性でねじ伏せて。


でも、そんな邪な気持ちもの寝顔を眺めていたらいつの間にか消えてなくなっていた。


完全に寝入ったに、カカシは撫でていた手を止めて。
苦しそうに、酸素を求めてわずかに開く唇にそっと触れた。



寝ている時はこんなにも簡単に触れられるのに。




「風邪なんて、オレにうつしちゃえばいーんだよ。」

そう呟いて、触れるだけのキスをした。





今日はなんにも考えずに、ゆっくりおやすみ。


「じゃ、いってきます。」
名残惜しい気持ちを抑えて、カカシは最後にの頭をもう1度なでてから玄関へと向かった。



こちらの世界に来てから、を取り巻く環境は慌ただしく過ぎていった。

夏が終わりに向かうにつれて、気がゆるんだのか。
風邪に気づかないほどに、疲れに対して感覚が麻痺していたのか。

どちらにしても、慣れない生活に必死に適応しようと日々頑張ってきたに身体が根をあげたのだろう。



「これでオレの気持ちなんて告げたら、・・・どーなっちゃうんだろ。」

家をでて任務に向かう道すがら、カカシはそんなことを1人考えていた。












久々の更新です。

風邪ひいた時って、おかーさんが恋しくなります。
ちゃんと看病された記憶なんて一切ないんですけれどもw

48巻で萌えあがった気持ちをぶつけたいと思います!!
カカシ先生ー!!おかえりなさーい(涙 !!!